原爆死没者のためのスピリチュアルコンサート「レクイエム」を聞きに行きました★久々に演奏会のレビューを書いてみます。このブログに書いていなくても、ちょくちょくは演奏会に顔を出したりしてるんですが、細かいことこのブログに書いても果たして読んでる人興味あるのかなと思って書いてませんでした(笑)
しかし今回は講座の先生が出演されている演奏会で、久しぶりに世界に入っていける演奏を聴けたので出来るだけ音楽の用語を使わずに正直に感想を述べてみることにします。
グレゴリオ聖歌
去年グレゴリオ聖歌→オルガン曲→フォーレのレクイエムという構成ですが、現在演奏されるレクイエムはそのほとんどがグレゴリオ聖歌をルーツとしているのでグレゴリオ聖歌をプログラムに含めることは非常に興味深いです。ミサ通常文(*1)を演奏。美しいユニゾンを聞かせて頂きました。
オルガン曲
今手元にプログラムを持っていないので作曲家の名前を覚えていないのですが、19世紀後半に活躍した作曲家の作品と記憶しています。ルネサンス・バロックの様式とは性質の異なるポリフォニー音楽(*2)で、グレゴリオ聖歌を終えて間髪入れずにオルガンの演奏に入ったため、違和感を感じました。
個人的にはオルガンはバッハにして欲しかったです。去年のパッサカリアがあまりにも圧巻、あまりにも荘厳だったので余計残念に感じてしまいます。
しかし、オルガンの低音域の響き、生で聴くとやっぱり全然違ってて鼻血出そうでした(笑)
レクイエム第1曲 Introitus et Kyrie
フォーレのレクイエムの顔とも言えるこの曲。去年よりオーケストラ、合唱ともにダイナミックレンジ(*3)が広く、圧巻されました。Kyrie(キリエ)の男性合唱では先生聞かせてくれました。
レクイエム第2曲 Offertorium
フォーレのレクイエムの中では最もポリフォニーな合唱が聞ける曲。テノール(バリトン)のソロはテノール独特の華やかさが抑えられた落ち着きのある音色でした。
レクイエム第3曲 Sanctus
明るく美しい旋律がゆったりと流れる曲。ハープの聞かせどころです。ヴァイオリンのオブリガードは狙っていたのだと思いますがそれにしても合唱と離れすぎている感がありました。オーケストラ全体での音量の絞り方が上手かった!ここでも鼻血(笑)
レクイエム第4曲 Pie Jesu
ボーイソプラノで歌われることの多いこの曲。去年はボーイソプラノで、今年もボーイソプラノ。しかし、今回も演奏者を見ることが出来ませんでした。(*4)それにしても、ボーイソプラノとは元来演奏が不安定になりがちなものですが、安定感のある質の高いソプラノを聞かせて頂きました。あの若さ(年齢不詳ですが若く見えた)ではすばらしい歌唱力だった!
レクイエム第5曲 Agnus Dei
フォーレのレクイエムでは最もお気に入りの曲。聞いたこと無い人でも、映画音楽のような臨場感に圧倒されるはずです。今すぐYo○tubeとかで聞いてみて下さい。超おすすめです。オーケストラの演奏(特にベース)が心地よく、安心できる演奏でした。
レクイエム第6曲 Libera me
オーケストラの盛り上がりが印象的な曲。オーケストラ好きの私にとってはかなり楽しめる内容です(笑)ホルンとトランペットのダイナミックレンジと安定感には度肝を抜かれました!音が高くて小さくてもトランペット音はずさないし、音色も弦楽器に溶け込んでいる…すごい!テノールの演奏も、ボーイソプラノに比べて抜群の安定感でした。やはり年齢・経験の差でしょうか、安心して聞くことが出来ました。
レクイエム第7曲 In paradisum
フォーレのレクイエムが他のレクイエムと特に違うところがあるとすれば、ミサ通常文に従っていないこの曲が含まれていることです。(*5)多くのレクイエムが死への恐怖、死者への鎮魂を表現しているのに対し、私はこの曲を聴いて死を享受し天に昇っていく様を思い浮かべます。私はレクイエムの中でも特にフォーレのレクイエムが好きですが、それはこの一曲によるものが大きいでしょう。ソプラノによる天使のような歌声が心地よく、耳に残りました。
全体としては、演奏レベルはもちろん高いのですが、8月6日という広島にとって特別な日に歌うことを強く意識された演奏でした。音の質のみにこだわれば、ホールで演奏するはずですから、演奏会というよりも協会の雰囲気を大切にしているようです。
ところで、目の前の席でスコア見ながら演奏を聴いている人がいました。まるで演奏者の力量や指揮者の表現を評価しているようで気持ちの良いものではありませんでした。演奏会では、純粋に音楽を楽しめる聴衆でありたいですね。
ともあれ師匠、演奏お疲れ様でした!
(*1)
ミサで必ず唱えられる祈りの文のこと。ミサとはカトリック教会でおこなわれる典礼儀式のこと。
(*2)
ポリフォニー音楽とは、複数の旋律が絡み合った音楽。ポップスを含む現在の音楽のほとんどのジャンルは和音と旋律からなるホモフォニー音楽だが、この対義語として用いられる。ホモフォニーが和音に対して旋律を重視するのに対して、ポリフォニーでは全ての旋律を同じように重視する。正確には旋律では無く、声部が絡み合ったもの。ポリフォニー音楽には時代の流れによって大きく二種類に分けられます。ルネサンス~バロックに至るまでに極められた調性を意識したものと、近代~現代に至るまでに十二音技法などを用いて実験的に作られたものです。バッハと今回の作曲者は、この二種類に分類出来てしまいます。
(*3)
小さい音~大きい音までの範囲。
(*4)
私の背が低いため。
(*5)
別名「死者のためのミサ曲」と呼ばれるレクイエムは、本来「ミサ通常文」と呼ばれる祈りの文に従って作られていました。フォーレはミサ通常文以外の祈りの文を用いてLibera meをミサ終了後の祈りの歌、In paradisumを死者を埋葬する際の祈りの歌として
レクイエムに追加しました。
暑い中、たくさんに、スピリチュアルコンサートに来てくれてありがとう。
年末に世界中で第九が演奏されるように、夏にレクイエムが世界中で演奏されるようになることを願って、これからも歌い続けるつもりです。
・・・それにしてもここまで聴きこんでいただき、すごい!
去年よりもさらにハイクオリティな演奏で世界に引き込まれました★shokenさんが広島の大学に来られなかったら、8/6にレクイエムを演奏することは無かったかもしれません。何か意味があるように感じます。演奏お疲れ様でした!