映画「ユドノミ」楽曲解説

この度、自主制作映画「ユドノミ」の音楽を担当させて頂きました。(映画は2/14に初回の公開、4月に広島で上映会もありますのでウェブサイトでご案内させて頂きます。)

谷口梯三監督の作品には今回初めて関わらせて頂きました。谷口監督は東京で活動されていますが、2013年頃から自主制作映画で関わらせて頂いている吉松幸四郎監督(広島)のお知り合いの方です。谷口監督は、吉松監督作品に使われている音楽を聞いてプレパラート作品に興味を持って頂いて、今回の映画制作に声をかけて頂きました。

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映画「ユドノミ」公式情報はこちら

先週、映画を制作された谷口梯三監督から「ユドノミ」のDVDパッケージが届きました。(DVDとブルーレイが選べて、本当はブルーレイが欲しかったのですがMacだと再生できないみたいなのでDVDを頂きました。)

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楽曲制作の際に映像を確認しながら作業をしていたので、完成品は一応目を通していましたが、改めて映画を見てみました。

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映画のストーリーについては、詳細はネタバレになるので公式情報以上の事はここには書けませんが、日々の生活(日常)に退屈している方には是非見て頂きたい映画です。改めて大事な事に気づかされるとおもいます。また過去、現在、未来を行き来するような不思議な感覚を味わう事のできる作品です。役者さんの演技も自然で、とても好感が持てます。

さて、今回制作させて頂いた楽曲は全部で5曲です。谷口監督からは6箇所に音楽を入れたいという要望があり、サンプル映像を頂いた際にはあらかじめ仮の音源が入れてありました。

もともとはプレパラートで使えそうな音源を選定するという段取りで話を進めていました。しかし映像に合わせようとするとプレパラートの音源では説明的になりすぎる(旋律が主張しすぎる)と考え、映像に合わせて新たに書き下ろすことにしました。

制作にあたり、全体の統一感を出すためにまずはメインテーマの旋律を考えました。チラシの写真を見たときにメインテーマのイメージはあったため割とすぐに作りました。

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(図)メインテーマの旋律

最近の楽曲制作の手順としては、
①ピアノを補助的に使いながら頭の中で旋律、和声、楽器などのアレンジをほぼ完成させる
②五線(紙)に一旦書き出して展開などに問題がないかチェック
(上記写真の楽譜はこの時点のもの)
③録音、ミックスを同時進行で行う

という流れが多いです。②をやる理由は、いきなり③録音に取り掛かると「やっぱり展開をこうしたほうがいいなあ」等と思ったときに後戻りになり時間がかかってしまうからです。どうしても③録音、ミックスに時間がかかるので、この作業は一発でできるように工夫しています。また録音するときにリコーダー、オカリナ、ユーフォニウム、ギター、ベースなどの楽器演奏をすることがありますが、このときにも仮の楽譜があると録音作業が早くなります。②をやるのが一見めんどくさそうに見えますが、このやり方が今の所一番早いです。

但し、今回は映像に合っているかどうかを頭の中でチェックできなかったので、①の時点である程度アレンジが固まってきたら先に③仮録音して映像に当てはめていく手順で制作しました。

というわけでメインテーマの旋律を元に作成した楽曲が以下の4曲です。

[音源引用 no=”1201600090001″]
一通り映像に目を通してから、一番印象的だった最後のシーンのエンドロールを最初に作成しました。

[音源引用 no=”1201600060001″]
次にメインテーマ。この曲は映画の中で2箇所使用していますが、単なる使い回しではありません。映画の中でも印象的な「まいまいず井戸」が出てくるシーンを関連付けるために使用しています。映画を見られた方は、同じ井戸が出てくる場所に同じ曲が使われている事に気づいて頂けたでしょうか??時系列が異なるシーンの関連付けも音楽の得意とする領域です。

[音源引用 no=”1201600070001″]
シーンの切り替え用に制作。暗い映像→明るい映像に変化するのに合わせて音楽を作りました。

[音源引用 no=”1201600080001″]
森の中を散策するシーンの音楽です。映画の中でも盛り上がるシーンですが、仮音源では歌が使われていました。ここでもメインテーマからの引用で、得意のピアノ+ストリングスで制作しました。

[音源引用 no=”1201600050001″]
映画冒頭の二人で散策するシーン用に制作。この曲だけメインテーマの旋律を使用していません。この曲が一番最近のプレパラートっぽい?かもしれません。

というわけで「ユドノミ」の楽曲解説をしてみました。いかがだったでしょうか?音楽がどのようなコンセプトで作られているか知っていただければ、映画を違った角度から見て頂く事ができるかもしれないとおもい、今回記事を起こしてみました。

次回の自主制作映画関連の記事では、吉松幸四郎監督「雲の通ひ路」の楽曲解説記事を起こしてみたいとおもいます。また、時系列はおかしくなりますが2013年に音楽を担当した「閼伽の水」の楽曲解説もいつかしてみたいと思っています。今後は楽曲解説コーナーも少しずつ増やしていこうとおもいます。